研究紹介

三次元動作解析システムなどを用いた運動器疾患患者の動作特徴の解明

ヒトは地球上において,重力の影響下にて立ち上がり動作,歩行などの基本的動作をおこなっています.しかし,加齢や外傷などにより,関節への力学的ストレスがより増大することで変形性膝関節症などの変性疾患が生じ,活動制限に至ります.運動器疾患を対象としている理学療法士において,病態発症および進行の原因を明らかにし,さらに個々の患者に応じた理学療法を提供するための客観的評価方法を開発することは非常に重要であります. 当研究室は三次元動作解析システムや表面筋電図,モーションセンサーなどを用いて,高齢者や運動器疾患患者の動作の特徴を明らかにします.そして,理学療法学の発展に貢献できることを目指しています.

1. 変形性膝関節症の病態発症および進行の原因の解明に繋がる研究
Key words:変形性関節症,力学的ストレス,動作解析

変形性膝関節症は異常なメカニカルストレスの蓄積が関節軟骨の欠損や骨棘形成などの病理学的変化を惹起し,変形性膝関節症を進行させます.異常なメカニカルストレスを生じさせる要因を明らかにすることは,変形性膝関節症の発症および進行予防にとって重要であります.しかしながら,変形性膝関節症の発症および進行の予防に有効な運動療法は未だ確立されていません.三次元動作解析システムや表面筋電図を用いて,メカニカルストレスの増大の原因となっている運動学および運動力学,筋電図学的特徴を明らかにします.

2. 運動器疾患における身体運動の協調性に関する研究
Key words:運動器疾患,基本的動作,協調性,変動性

特定の動作において,動作達成のために各要素が独立しているのではなく関連し,さらに関連する要素は,機能的要求を満たすように作用することで協調していると解釈できます.さらに,各要素の運動のばらつきは,運動を協調し課題達成のために利用されていると捉えることができます.従って,単関節機能のみに着目せず,患者が行なっている動作から構成する各要素の関連を考慮して,どうやってその動作を達成しているかの視点で分析することが重要となります.身体運動の協調性を高める理学療法プログラムの有効性を確立することを目指します.

3. 運動器疾患に対する運動機能評価に基づくサブグループ化を確立する研究
Key words:筋機能障害,関節可動域制限,疼痛,理学療法評価

同じ運動器疾患においても,症状や機能障害は患者によって異なります.運動器疾患患者と対照群の比較をするだけでは患者に合わせたテーラーメイドの運動療法は提供できないと考えられます.重症度や症状の有無だけでなく,運動機能障害の違いによる動作の特徴を明らかにし,臨床に還元することを目指します.

4. 新しい客観的評価方法を利用した理学療法の効果検証における症例研究
Key words:モーションセンサー,ビデオカメラ,表面筋電図

教育・研究機関と臨床現場との協働を行い,臨床現場で計測可能な臨床指標となる運動学的データと三次元動作計測システムで計測した運動力学データとの関連や妥当性の検証します.そして,理学療法評価に加え,二次元動作解析やモーションセンサから運動学的データの臨床指標を定量化し,症例報告や臨床研究に活用します.

5. 文理融合型をはじめとした他学部との共同研究
Key words:文理融合,共同研究

大分大学福祉健康科学部は理系の理学療法コースと文系の社会福祉実践コース,心理学コースと文理融合の学部であります.
そのため,これまでに心理学コースと「身体志向の心理療法における身体感覚への気づきと自己制御に関する異分野融合型検証(科研費)」を行なうなど,文理融合型研究を行っています.
また,他学部との共同研究も行っており,教育学部と「教員養成学部における歌唱指導のためのeラーニング教材の開発(科研費)」や理工学部や医学部と共同研究で症例報告を中心とした動作解析の計測を行っています.